Antoine Beuger - tschirtner tunings for twelve (another timbre)
Played by Konzert Minimal
Pierre Borel - alto saxophone
Lucio Capece - bass clarinet
Johnny Chang - viola
Catherine Lamb - viola
Hannes Lingens - accordion
Mike Majkowski - double bass
Koen Nutters - double bass
Morten J. Olsen - vibraphone
Nils Ostendorf - trumpet
Derek Shirley - double bass
Rishin Singh - trombone
Michael Thieke - clarinet
室内楽的なアンサンブルによるアコースティックな手法のドローン。
精神病棟で長い年月を過ごした芸術家Oswald Tschirtnerの名を冠した作品は、内向的で穏やかな生活の中でミニマルなドローイングを発表した彼の影響が色濃く表れているらしい。
30ページに渡るスコアの各ページの1〜2つのトーンがそれぞれのメンバーに割り当てられ、それぞれが任意のオクターブとピッチとタイミングで演奏する構成となっている。
総勢12名による演奏とは思えないミニマルな音像は、精密でありながらソフトであり、静的でありながらも微かに変化し続けている。
Magnus Granberg & Skogen - Let Pass My Weary Guiltless Ghost (another timbre)
Magnus Granberg - prepared piano & composition
Ko Ishikawa - sho
Anna Lindal - violin
Leo Svensson Sander - cello
Simon Allen - vibraphone
Erik Carlsson - percussion
Henrik Olsson - objects
Petter Wästberg - contact microphone,mixing board,loudspeaker
Toshimaru Nakamura - no-input mixing board
行き交うように音がすれ違っていく様は、さながらコラージュのような取り留めのない音色の連続。
そっけなく、ただあるがままに聴き手の前に置かれただけのようにも感じられるかもしれないが、弦の上を指が滑る音や管楽器のブレスが掠れる音色など、演奏における所作の数々が、サウンドの雰囲気を構築する要素になっている。
Christoph Schiller - Variations (another timbre)
played by Christoph Schiller
another timbreの諸作品には、音を「鳴らす」というよりも、音を「漂わす」という表現が当てはまると感じられる作品が多い。
サウンドを構築するだけでなく、同時に雰囲気を作り上げることで、ひとつの作品として成立している。
この雰囲気が非常に重要であり、この作品もその傾向が強いと感じられる。
更にこの作品からは、音を「配置する」というイメージも与えられ、実際に演奏者のChristoph Schillerはインタビューで下記のように述べている。
- - - - -
ピアノを弾くことなくピアノを使う方法を見つけようとした。つまりピアニストではなく、ピアノの音色をオブジェクトとして使うことです。
.
沈黙の主な理由は、他の要素が正式な影響力を持つためのスペースを提供したかったためです。
- - - - -
沈黙との対比によって、音の輪郭を明確にし、その美しさを際立たせることで、部分では難解な点もあるが全体では成功している。
無機的にも聴こえるが、徹底した自由さと自然さが作品としての成り立ちを支えている。
Catherine Lamb - Point/Wave (another timbre)
guitar,electronics - Cristián Alvear
Cristián Alvearの依頼によってCatherine Lambが初めてアコースティックギターのために書き下ろしたという楽曲をクラシックギターで演奏した作品。
バックに漂うエレクトロがポツポツと爪弾かれるギターと重なり、その輪郭を際立たせている。
タイトルの通り、ギターで点を描き、エレクトロによるサウンドで波を表現したかのような音像は、潮の満ち引きのような緩やかな掛け合いが演じられている。
アコースティックギターではサウンドが尖りすぎてしまうと考えられ、クラシックギターを用いた事が成功の要因になっている。
また、エフェクトを効かせたエレキギターで表現する手法も興味深いけれど、それではanother timbreらしい音として成立せず、よくある都会的でスマートな音に収まってしまう事になるとも予想される。
アコースティックギターのための楽曲をあえてクラシックギターで演奏したことによって成功し、近年のanother timbreらしいサウンドも美しく体現できている作品。
Insub Meta Orchestra - 13 unissons & 27 times (another timbre)
composed by Cyril Bondi & d’incise
Alexis Degrenier - hurdy gurdy
Anna-Kaisa Meklin - viola da gamba
Angelika Sheridan - flutes
Antoine Läng - voice
Anouck Genthon - violin
Bertrand Gauguet - saxophone
Brice Catherin - cello
Bruno Crochet - laptop
Christophe Berthet - saxophone
Cyril Bondi - harmonium,bass drum
d’incise - laptop
Daniel Tyrrell - acoustic guitar
Dorothea Schürch - voice,singing saw
Eric Ruffing - analogue synthesizer
Gerald Perera - electric double bass
Hans Koch - clarinet
Heike Fiedler - voice
Ivan Verda - electric guitar
Jamasp Jhabvala - violin
Luc Müller - floor-tom,melodica
Maxime Hänsenberger - bowl,harmonium
Raphaël Ortis - laptop
Regula Gerber - double bass
Rodolphe Loubatière - bowl,cymbal
Sébastien Branche - saxophone
Sandra Weiss - bassoon
Steve Buchanan - saxophone
Thierry Simonot - laptop
Violeta Motta - flutes
Vinz Vonlanthen - electric guitar
Wanda Obertova - voice
Yann Leguay - electronics
主にスイスのミュージシャンを中心とした音楽集団Insub Meta Orchestra 総勢32名による一大ドローン。
ハーディガーディやミュージックソーなど様々な楽器を用いた多様なアプローチで洗練されたサウンドスケープが描かれている。
これだけ多くの要素で構成されているにも関わらず安易に即興的なサウンドを展開せず、派手な音の重なりを演出していない点が印象的。
「13 Unissons」ではオーケストラを13の小グループに分けて編成し、それぞれ1つの音符をユニゾンで演奏することにより、結果的に大きな川の流れのようなアンサンブルが演出されている。
緻密な構成/指揮の下で表現された美しいサウンドスケープ。
Ferran Fages - Radi d’Or (another timbre)
Performed by the Ferran Fages Ensemble
Olga Ábalos - flute & alto saxophone
Lali Barriere - sinewaves
Tom Chant - soprano and tenor saxophones
Ferran Fages - acoustic guitar
Pilar Subirá - percussion
序盤はアコースティックな即興による静かな鳴き交わし合いが展開され、その後は徐々に電子的な持続音が覆い被さるかのようにサウンド全体を支配していく。
長尺の楽曲でこそ再現できるサウンドスケープであり、抑制されたテンションの下で徐々に表情を変えていく音色と構成が印象的。
Ferran FagesはCreative Sourcesといったanother timbreと同系列の実験音楽のレーベルからもいくつかの作品をリリースしており、そのうちの多くが他ミュージシャンとの共作であるが、今作はソロ名義であり、彼が中心となったメンバーでの演奏になっている点も興味深い。
エレクトロなミニマムミュージックに留まらず、アコースティックなサウンドで構築されている点がanother timbreらしく、この視点とアプローチが現代の音楽シーンにおいて貴重。
穏やかに巻いていく渦の焦点が徐々に絞られていくかのような五重奏。
Giuliano d’Angiolini - Cantilena (another timbre)
1.Aria del flauto eolico
Manuel Zurria - flutes
2.Finale
Melaine Dalibert - piano
3.Cantilena
Quatuor Parisii
Arnaud Vallin & Doriane Gable - violins
Dominique Lobet - viola
Jean-Philippe Martignoni - cello
4.Allegretto 94.6
Melaine Dalibert - piano
5.suoni della neve e del gelo
Quatuor Parisii
6.Motivetto
Ensemble Chrysalide
Baptiste Boiron - saxophone
Benjamin Boiron - cello
Melaine Dalibert - piano
イタリアの作曲家による室内楽の作品集。
フルートによるアコースティックなドローンの雰囲気を漂わせる現代音楽の色が濃い「Aria del flauto eolico」で幕を開けたかと思うと、続く「Finale」では滔々と重ねられるピアノの音色の美しさに耳を奪われる。
「Allegretto 94.6」でトイピアノの独奏を披露したかと思うと、その後は現代音楽に没頭した硬派なサウンドが続く。
曲ごとに演奏者が異なるため、サウンドも同様に曲ごとの振り幅が大きい。その結果、曲ごとにサウンドを明確に対比させることに成功しており、メロディの美しさが際立たせられている。
構成によって作品を盛り上げている点も興味深い。